『僕たちの好きな三国志』

 別冊宝島編集部編『僕たちの好きな三国志』(宝島社文庫、2006年)って本を買ってみた。人物解説に陸抗の記述があるということで、以前から気になっていたもの。全283ページ中、269ページから281ページまでが最終章「晋の成立」となっている。まあ……三国志本の大半が(興味関心的な意味で)ムダになるのは、いつものことなので。その一つ前の章が鄧艾、姜維、司馬氏あたりの話。

 一応全部読むけれど、まずは最後の方だけ読んでみた感じ、特に目新しい話はなく、普通にそのころの流れと主要人物が解説してある感じ。なぜか著者名が明記されていないので推測になるが、この本(の、少なくも晋のあたり)を書いたのは『三国志新聞』の著者です……ね? 万一そうでないとしたら、文章に『三国志新聞』のパクリとしか思えないくだりが多すぎる。

 人物解説では、司馬炎、孫晧、劉禅がイラストつきで酷評されており、孫晧のくだりで「彼の父孫和が追放された事情を知り、その原因となった孫権を恨みその国を滅ぼした、という確信犯説もある」などなど。そんな「説」があったとは? いかにも一般的に流布しているかのようだが、単に著者の自説ではないか。しかしこのくだりの「確信犯」とは現代俗語なのか、本来の意味なのか、どちらともとれるところは興味深い。

 この章の人物解説は、三大君主以外はたったふたり、陸抗と鍾会である。ふたりとも4行だけ。ていうか鍾会と劉禅はひとつ前の章でもよくない? 羊祜はー? 王濬はー? 杜預はー!?

 羊祜については一応、流れ説明の方でちょっとだけ触れられている。「彼(※陸抗)と晋の荊州方面総司令官羊祜は、激しく戦いながらも、羊祜が病弱な陸抗に薬を送るなどの数々の美談で飾られた、三国志の最後を飾る名勝負であった。」……って、ありがとうございます、せめて陸抗絡みだけでも言及してくれて。でも日本語おかしいから! 校正さんしっかりして!

 ページ数の都合上仕方がないのだろうけど、王濬や杜預は名前すら出てこない。たぶん。こうしてみると陸抗が功績に言及された上に、人物解説のたった二人という狭き門に入ったというのは(たとえ4行でも)、凄いことだったのね!

 それにしても著者が、陸抗は病弱の身でたった一人で斜陽の呉を支えた! 凛々しいけどなんだか可哀想! みたいな感じを推しているのはもう、わかったから……まあ、平均的な陸抗ファンとしてそこは特に反論したいところではないと思うので(私個人としてはむしろ萌えポイントだ)、誰も文句は言わないのだろうが。

 だが、陸抗の跡を継げる人がいなかったのは、人材不足という以上にシステムが破綻していたのではないか。その後の情勢を考えると、たとえ陸抗が健康で存命だったとして、晋の怒濤の攻略に太刀打ちできたのか。リアルに考えればさすがに無理である。なので彼の天命があのあたりであったことで、死ぬまで呉を護り続けた最後の名将、みたいな印象になってむしろ良かったのだと思う次第。いろいろなところで「そんな大袈裟な……」と思いつつも「でも彼はそういうキャラだから!」ってことで陸抗が好き。それがファンというものです。

 姜維ファンは、この本は読まない方が良い。酷評を通り越して、切り捨ててある印象。私は彼に格別良い印象は持っていない(とはいえ別に嫌いなわけでもなく、とても普通)が、そこまで言うの(゜ω゜)って感じ。

後日記

 その後、他の部分もぱらぱら読んでみたが、末期部分以外はこのまま読まずに封印しようかと……思えてきた。

 姜維をこきおろすのに正史では云々であって演義みたいにかっこよくないんだぜ、みたいなことを自慢げに書いてある一方、周瑜と曹操の関係などが演義のフィクションなのにいかにも史実かのように書かれていたりと、「この本を信じるとだまされる!」という予感がしたので。いわゆる「正史」や「演義」に詳しくて、そのあたりの判断に自信がある人なら(つっこみ方向に)楽しめるんじゃないかな。

 「正史」が歴史の真実だというわけではないが、一応本当にあったとされることなのか、あくまで文学上のフィクションなのか、自分の中でソースを切り分けたい。が、私は何しろ一般的に人気のある時代に対する知識が浅いから、絶対だまされる自信がある。笑

2007.08.15